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『笑い事じゃありません。日織さんには自分がとても愛らしくて魅力的な女性だという自覚が足りなさ過ぎます。ホント無防備すぎて腹立たしいです』
何だかめちゃくちゃほめ殺しにされた上で、怒られてしまった。
「……ご、ごめんなさいっ」
照れながら言って、ふと先ほどからずっと、私のことを日織さん、日織さんと名前で呼んでいらっしゃるけれど、修太郎さんが今おられる場所は職場ではないのかしら?と思いいたる。
携帯だから、圏外と電池切れに気をつけてさえいれば、どこでだって――それこそ移動しながらだって――話せるわけで。
自分も通りへ向けて歩きながら話していることを棚に上げて、改めて携帯ってすごいな、と思ってしまった。
「修太郎さん、今、市役所ではない……のでしょうか?」
思ったら、ふと聞いてみたくなった。
意識してみると、修太郎さんのお声、いつもより少し息遣いが乱れておられるような気もして。
『日織さんからお電話を頂く少し前に退庁していましたよ。今は外を歩いています』
「あの、そういえば……電話していて大丈夫ですか?」
なんて今更だ。
散々話しておいて、今大丈夫ですか?なんて今更な質問等だと、言ってから思う。
『問題ありません。――あ、見えた』
そう修太郎さんがおっしゃって、受話口と背後から『日織さん!』と声がダブって聞こえた気がして――。
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