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「日織さん、いけません。そんなに僕を甘やかすと、つけ上がってしまいます」
とても困ったような声音で、修太郎さんがしぼり出すような声音で吐息まじりにそうおっしゃって。
私は彼のその声だけで、心音が修太郎さんに聞こえてしまうのではないかと思うくらいドキドキしてしまう。
修太郎さんは一度私を抱きしめる腕の力をギュッと強めたあと、気持ちを断ち切るみたいに腕を伸ばして距離をとられた。そうして、恐る恐る私のほっぺに唇をお寄せになると、肌をほんの少し掠める程度の軽いキスをくださる。
スマートフォンを握り締めたまま、照れくさくて思わず固まってしまっていた私を、修太郎さんがじっと見つめていらっしゃいながら
「日織さん、スマホ、iPhoneになさったんですね。赤、貴女にぴったりで可愛らしいです。ですがそんなふうに持ったままだとまた落としてしまうかもしれませんし、鞄に仕舞われることをお勧めします」
そうおっしゃってから、もう一度いたわるように優しくそっと抱きしめていらした。
そうして、付け加えるように「僕も日織さんと一緒だと自分を抑えられる自信がありませんのでお願いします……」と、耳元で切ない声をお出しになるから。
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