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ただ、手を繋いで道を歩くだけで照れていらしたかと思えば、車の中でいきなり私の指に口付けをなさるし……。
修太郎さんの、この振り幅の差は何なんだろう。もしかして……屋外と屋内の差?
ふとそこまで考えて、指に這わされた修太郎さんの舌の感触を生々しく思い出してしまった私は、途端にまたしても心乱される。
(……何だかとっても悔しいのですっ!)
いつもいつも……それこそ中だろうが外だろうがお構いなしに一杯一杯の私。時折こんな風に修太郎さんに余裕綽々な態度を見せられると、自分ばかりが彼のことを好きみたいに思えてきて、モヤモヤするのと同時に、正直たまらなく寂しくなる……。
「私、まだ健二さんとお話できていません。それに……両親にも健二さん以外に好きなかたができたこと、ちゃんと伝えられていないんです。なので……一度通過していただけると助かります。――送っていただいておきながら勝手を言って、本当にすみません」
自分ばかりがあたふたとしているみたいで、気持ちが晴れなかったから。
半ば意図的に健二さんのお名前は二度も出しておきながら、逆に修太郎さんのお名前は一度も呼ばずにぼかしてしまった。
(まだ完全に修太郎さんと恋人にはなり切れていないのだと、わざわざ暗ににおわせるようなこんな言い方。――私は本当に意地悪なのです)
修太郎さんは、健二さんのお名前を出した瞬間よりも、ご自身のお名前を誤魔化された時のほうが、より強く反応なさって。
「っ、修、太郎さん?」
痛いくらいに結んだままの手指をギュッとつかまれたことに驚いて、私は眉をしかめて彼の名前を呼ぶ。
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