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「修太、郎、さんっ。今夜っ! 今夜、必ず健二さんにお電話しますからっ。……だからもうこれ以上はっ」
近所の誰かに見られてしまったら、と思うと怖くてたまらなかった。
結婚もしていない私が、あろうことか許婚ですらない男性と、車中で破廉恥な行為に及んでいたとか言われてしまったら……。それがお父様やお母様のお耳に入ってしまったら……っ! 絶対に二人を悲しませてしまう。
それだけは嫌だった。
私は涙目で彼を見上げて、必死で言葉をつむいだ。
「……お願いなのですっ」
再度、懇願するようにそう吐き出したら、あごの方へ伸ばされていた修太郎さんの手に、こぼれ落ちた涙がポタリと落ちてはじけ散った。その瞬間、修太郎さんはハッとしたように動きを止められて……縫いとめていた私の右手を慌ててお放しになる。
彼に押さえられていた右手は、強い力でシートに押し付けられたため、こすれて赤くなってジンジンと痛んだ。
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