13.車のなか*

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「修太、郎、さんっ。今夜っ! 今夜、必ず健二さんにお電話しますからっ。……だからもうこれ以上はっ」  近所の誰かに見られてしまったら、と思うと怖くてたまらなかった。  結婚もしていない私が、あろうことか許婚(いいなずけ)ですらない男性と、車中で破廉恥(はれんち)な行為に及んでいたとか言われてしまったら……。それがお父様やお母様のお耳に入ってしまったら……っ! 絶対に二人を悲しませてしまう。  それだけは嫌だった。  私は涙目で彼を見上げて、必死で言葉をつむいだ。 「……お願いなのですっ」  再度、懇願(こんがん)するようにそう吐き出したら、あごの方へ伸ばされていた修太郎(しゅうたろう)さんの手に、こぼれ落ちた涙がポタリと落ちてはじけ散った。その瞬間、修太郎さんはハッとしたように動きを止められて……縫いとめていた私の右手を慌ててお放しになる。  彼に押さえられていた右手は、強い力でシートに押し付けられたため、こすれて赤くなってジンジンと痛んだ。
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