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「ももも……っ」
もしもし、と言いたかったのに、余りにも緊張しすぎてわけの分からないことを言ってしまった。
『……日織さん?』
息を呑む気配がした後、電話口から健二さんの声が聞こえてきた。
(私が変な応じ方をしてしまったから、きっと戸惑っていらっしゃるに違いないのですっ)
そう思った私は、慌てて「はい!」と答えた……つもりだった、のに。
「は、はひっ」
またしても噛んでしまって……。自分で自分が嫌になる。
と、通話口を通してクスクスと健二さんの笑い声が聞こえてきて。
彼の声は笑い声も含めて、どなたかに似ている気がするのに、私はどうしてもそれが誰なのかを思い出せなくてもどかしくなる。
『いや、失敬。この感じは確かに日織さんだなぁと思ったらおかしくなってしまいました』
ひとしきり笑い声が聞こえた後、健二さんがクスクス笑いながらそうおっしゃって。
舌を噛んだり慌てたり。そんなのを聞かれて私らしいと言われても……。
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