14.お会いできますか?

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(健二さんは私のことなんて、そんなにはご存知ないはずなのに)  そう思ったら何となく悔しくて、私は思わずぷぅっと膨らんで、 「私のことなんて何もご存知ないくせに」  と、言ってしまっていた。  修太郎(しゅうたろう)さんに同じことを言われたならば、「ごめんなさい」と素直に謝れていた気がする。  でも、健二さんと私は面識がないも同然なのだ。  そう思ったら、知ったようなことを言われたのがすごくすごく腹立たしくなってしまった。もっと言うと、相手だけが私のことを知っているような口振りなのが、何だかとてもモヤモヤして。 『貴女が思う以上に、俺は日織さんのことを知ってると思いますよ』  でも、私の抗議の声に何らひるむことなく、それどころか幾分も悪びれた風もなく健二さんがそう返していらしたから堪らないの。 「私は……健二さんのことを何も知りません。なのに……そういうのは何だかフェアじゃないと思うのです。私、対等じゃないのは……嫌です!」  今までならば、思っていても決して口には出来なかったであろう言葉。  でも、私は、市役所で出逢った皆様のおかげで、少なからず変われたんだと思うのです。  今まで健二さんがおっしゃることには――例えそのお姿が見えなくても――、何の疑問も抱かず、無条件で従う癖が付いてしまっていた。  でも、それって……本当はおかしいと思わないといけなかったのです!
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