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『ところで――今まで持とうともしなかった携帯を突然お持ちになられた理由はなんですか? 日織さん、俺に何か言いたいことがあるんじゃないですか?』
ドキッとした。
健二さんは、何もかもお見通しなのではないかと思ってしまって。
私は無意識に、服の胸元をギュッと掴んでいた。
心臓が物凄い速さで血液を送り出しているのが分かる。
喉が引きつって、口を開こうとしたら情けないくらいに唇が震えてしまって。
私は気持ちを落ち着けるために深呼吸をする。
「――あ、あのっ、突然で大変申し訳ないのですが……その……健二さんのご都合がよろしいときに一度、お会いすることは出来ませんか? 私、どうしても健二さんにお会いして、ちょ、直接お話させていただきたいことが……あるのです……」
しどろもどろではあるけれど、何とかシミュレーション通りに言うべきことが言えた!……と、思う。
ギュッと携帯を握り締めて……私は健二さんのお返事を待った。
心臓が、今にも口から飛び出してしまうんじゃないかと思うくらい、胸の中で暴れているのが分かる。
『もちろんいいですよ。俺も、そろそろ正式に日織さんとお会いしたいと思っていたところですし。――えっと、じゃあ」
健二さんが、手帳をめくられていると思しき音が、やけに耳に残って……。
『……そうですね。今週の日曜なんて、如何ですか?』
そう、提案された。
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