15.健二さん?

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「お父様、お母様、行ってまいります」  両親にも今日のことはお話してあった。健二(けんじ)さんと二人きりでお会いするお約束をいたしました、と。  何のために、とかそう言うことは一切割愛(かつあい)したのは、自分のズルさだと思う。  とりあえず健二さんとお話がつかないことには、とてもじゃないけれど他の方々を巻き込める自信が、今の私にはなくて。  許婚(いいなずけ)との初めてのデートのために、娘が(めか)し込んでいると思っていらっしゃるであろう両親には、申し訳ない気持ちで一杯で。 (ごめんなさいっ)  私は心の中で何度も何度もお二人に謝った。 「日織(ひおり)、本当にホテルまで送って行かなくていいのかい?」  お父様が出がけに心配そうに聞いていらしたけれど、私は全力でお断り申し上げた。 「大丈夫です、お父様。私にとってはこれも大事な社会経験なのです」  にっこり笑ってそう言ったら、お母様がほんのりと瞳を(うる)ませて私の手を握っていらしたので、びっくりした。 「日織、貴女、本当に成長したわね」  それは寂しさを滲ませつつも、どこか誇らしげでもあって。 「そうだと嬉しいのですっ」  お母様の手をギュッと握り返すと、私はにっこり微笑んだ。
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