15.健二さん?

5/16
前へ
/481ページ
次へ
***  それが、つい三十分くらい前のこと――。  腕時計を見ると、さっき見たときから五分ほど長針が進んでいた。  と、 「日織(ひおり)さん」  突然、後ろからポン、っと肩を叩かれた。振り返った私は、スーツ姿のその方を見て、瞳を見開く。  だってそこに立っていらしたのは、いつもは作業服姿のはずの――。 「(しゅう)太郎(たろう)、さん……?」 (え? どうして修太郎さんがここにいらっしゃるのですか? しかも、見慣れないスーツ姿なのは……何故でしょう!?) (私、健二さんと待ち合わせをして……。なのに……え? え?)  思わず立ち上がって一八〇センチある長身の彼を見上げたら、修太郎さんの後ろからもう一人、彼より気持ち背の低い男性が現れて。 「ちょっと兄さん、何で貴方が先に彼女に声をかけるんですか……」  話がややこしくなるでしょう、と言いながら、呆れ顔で修太郎さんを(たしな)めるその人も、私が存じ上げている方で。 (え? でも……え? なに? どういう、ことですか?)  いつもはお二人とも作業服姿なのに。修太郎さんと同じくスーツにビシッと身を包んだその方を見て、私はますます混乱する。
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2869人が本棚に入れています
本棚に追加