15.健二さん?

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 さっき、修太郎さんに肩を叩かれたときは、咄嗟(とっさ)のことで思わずお名前を口走ってしまったけれど、あの瞬間、私は健二さんの存在には気付いていなかったのだ。  どうしていいか分からず、思わず立ち止まって、オロオロと視線をさまよわせたら、「日織(ひおり)さん。今更そんな鯱張(しゃっちょこば)らなくても大丈夫ですよ。俺、兄さんから聞いてお二人のことは(おおむ)ね知ってますし。その俺がいいって言ってるんですから堂々と呼んでやればいいんです。貴女がそんなだから兄さんだって俺に対して――」と続けようとしたところへ、修太郎さんが「健二、要らないことは言わなくていい」と(さえぎ)っていらして。 (私がはっきりしないから、修太郎さんが健二さんに対して何かしてしまっているのでしょうか?)  修太郎さんのお顔を下から見上げてみたけれど、修太郎さんは何もおっしゃらなかった。
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