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「とりあえず、中、入りましょう」
赤くなった頬をさすりながら、健二さんがおっしゃるのへ、佳穂さんが私を振り返っていらっしゃる。
「日織さん、さ、行きましょう!」
修太郎さんに支えられてぼんやりと立つ私の手を素早くサッと握ると、佳穂さんが修太郎さんから私を引き剥がすようにしてお店の入り口に向かって歩き出す。
健二さんと修太郎さんが、その後を慌てて追う形で入り口をくぐられて。
「正午に四人で予約を入れてる神崎です」
と、佳穂さんがおっしゃると「お待ちしておりました」とウェイターさんが恭しく頭を垂れた。
ウェイターさんの案内について、私は佳穂さんに手を引かれるまま、修太郎さんと健二さんをチラチラと振り返りながら前進する。
そんな私に修太郎さんが手を伸ばされるのを、健二さんが「無駄だよ」という風に首を緩々と振っておられるのがとても印象的だった。
(佳穂さんには、お二人とも敵わないのでしょうか?)
そう思ってしまった。
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