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私の隣に佳穂さん、正面に修太郎さん、佳穂さんの向かいに健二さんという席順で座る。
どの席も、円形になった床の窓辺に沿うように長方形のテーブルが配置されていて、少し話している間にもほんの少しずつフロアが回転して景色がズレていっているのが分かった。
高所があまり得意ではない私は、佳穂さんにお願いして窓際を彼女に譲る。
佳穂さんは「絶景ねー」ととても嬉しそうで、「日織ちゃんももっと近くで楽しめたらいいのにね」と眉根を寄せた。
いつの間にか日織さんが日織ちゃんになっていて、その人懐っこさが佳穂さんらしさなのかな、と微笑ましく思う。
私にはこんな風にすぐに人と打ち解ける能力がない。
(佳穂さんって、すっごくすっごく明るくて……温かな、太陽のような人なのですっ!)
余りにも素敵な女性だから……佳穂さんのことを修太郎さんが選んだとしても、仕方がないような、そんな気持ちがしてしまう。
私はちらりと修太郎さんを盗み見て小さくため息を落とした。
「日織さん?」
そんな私の様子に目敏くお気付きになられる修太郎さんが、愛しくもあり、恨めしくもあって。
「な、なんでもありません」
小さくそう呟くように返すと、修太郎さんが佳穂さんに視線を転じた。
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