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「妹のことは異母兄妹でも、妹ととしか思ったことはなかったのに、何故か貴女のことは初めてお会いした瞬間から“女の子”だと思ってしまった。――本当に不思議です」
私も、お顔もお名前もすっかり忘れてしまっていたけれど、本を読み聞かせてくださった修太郎さんのお声が優しくて心地良かったこと、話してくださる物語がとても楽しかったことは消えずに覚えていられた。
「私が……本好きで、空想好きな女の子に育ったのは、しゅーおにいちゃんの……修太郎さんの影響なのですっ」
恐らく私にとっても、たった数時間にしか満たなかったあの時間は特別だったに違いない。
「ちょいちょい妄想の世界に旅立ってしまう困ったちゃんな私を作ったのは、まぎれもなく修太郎さんなのです。――だから……きっちり責任を取って……その、ずっと……離さないでいてくださいね?」
途中から何だか照れ臭くなってきて、しどろもどろでそう付け加えたら、修太郎さんが大きく瞳を見開いていらっしゃるから――。
(わ、私っ、何かいけないことを申し上げてしまったのでしょうか?)
修太郎さんの困ったような戸惑っているようなその表情に、私はそわそわしてしまう。
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