19.触れてみても構いませんか?*

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 もっと修太郎(しゅうたろう)さんがいっぱいいっぱいになられているお姿を拝見したい。  なのに、私は彼に触れたままの手をどうしたらいいのかさえ分からなくて、情けない気持ちになる。  とりあえず手を退()こうにも、下手に動かせば、もしかしたら修太郎さんに痛い思いをさせてしまうかもしれないと思うと怖くて動かせなくて。 「日織(ひおり)さん、大、丈夫ですから……。怖がらないで?」  切なげにそうおっしゃると、修太郎さんは私の右手を御自身の両手で包み込んでいらした。そうして私の手の中に、彼のものをギュッと握り込ませると、 「このまま、動かしても……構、いません、か?」  耳許(みみもと)に彼の低く(かす)れた吐息混じりの声を注ぎ込まれると、私はそれだけで全身が熱く火照ってしまう。 「日織……さん」  ほわほわとした浮遊感の中、熱い吐息とともに彼に名前を呼ばれた。その途端、身体に甘くとろけるような電流が走って。 「……ふ、あっ」  彼の声に、背筋がゾクリと粟立って、気がつけば私も鼻にかかった吐息を漏らしてしまっていた。  身体の奥の方がキュンと(うず)いて、私は思わず両足をすり合わせるようにして脚をギュッと閉じた。 「日織さん、これ以上……僕を、(あお)らないで?」  耳元で重ねられる修太郎さんの切なげなお声に、 「あっ、耳も、とでっ、そんなっ、されたら……無、理っ……なのですっ」  何とかそう言ったら、耳朶(みみたぶ)を優しく()まれた。  その刺激に思わずギュッと手に力が入ってしまって。 「――あ、っ」  初めて彼に呼び捨てられたことが切なくて、くすぐったくて。  私は身体中の血液が沸騰(ふっとう)してしまうんじゃないかと思うくらい、熱くなった。
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