20.見くびっていてすみません?

4/8
前へ
/481ページ
次へ
 屋上庭園に出ようと扉を開けると、途端、ものすごい風に見舞われた。  突風にスカートをめくられて、思わず手で布地を押さえたら、扉の方を持つ手がおろそかになってしまった。 「ひゃっ!」  危うく強風に(あお)られたドアに挟まれそうになった私を、後ろから来た健二(けんじ)さんがギリギリのところで助けてくださる。 「(あっぶ)ねー」  間一髪で助けられた私は、未だ恐怖でドキドキしたまま、縮こまって健二さんを見上げた。 「日織(ひおり)さんに怪我なんてさせたら俺、兄さんに殺されかねないんですけど」  言いながら、「パンツより身体を守ってくれないと!」と叱られてしまう。 (うー。どちらも守りたいのですが……)  思ったけれど、片方が手薄になってしまったから叱られてしまったわけで。  私はしゅんとして「すみません」と謝罪する。 「で、用件はうちの母のことですか?」  私が言うより先に、健二さんが溜め息交じりにそうおっしゃった。 「あ、は、はいっ」  どうして分かったんだろう?とキョトンとしたら、「あれだけ兄さんが連日家に来てれば馬鹿でも察しがつきますって」と健二さん。
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2874人が本棚に入れています
本棚に追加