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「日織さん」
「――?」
改まった声音にキョトンとして健二さんを見上げたら、いきなり頭を下げられてしまって、私は驚いてしまう。
「俺、日織さんのことぼんやりしたあまり考えのないお嬢さんだとか思って、結構見くびってました! ホント、すんません!」
貴女が、俺が思っている以上に色々見てるって分かってびっくりしました、と付け加えられた時、「あ、ありがとうございます」と思わず返してみたものの、もしかしてここは怒るところだったのでは?と少し遅れてハッとする。
「ほら、そういうところ。思いっきり抜けてるでしょう?」
クスクス笑われて、ムッとして健二さんを睨んだら、「けど、貴女は兄さんのことは本当によく見てくださってるって分かって、正直安心しました。――ありがとう」
言われて、ニコッと微笑まれた。
私は初めて健二さんの心からの笑顔を見せていただいた気がした。
「母さんのことは任せてください。首に縄つけてでも引きずって行きますんで。日程、みんなの都合がつきそうな日で調整つけてまた連絡ください」
健二さんの言葉に、私はホッと胸を撫で下ろした。
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