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健二さんが動いてくださることになってから、話がとんとん拍子で進んでいった。
やはり宮美さんは実子でいらっしゃる健二さんも関係のあることだと言われたら気持ちが変わってくださったらしくて。
ホッとしたのと同時に、修太郎さんの幼少期の淋しさを垣間見せられてしまった気がして、私は悲しい気持ちで一杯になる。
「僕が義母に懐かなかったのが悪いんですよ」
今はそう思えるんですけど、あの頃はそんな風に割り切って考えることは出来なかったんですけどね、と苦笑なさる修太郎さんに、私は上手くお答えすることができなくて、それがまたもどかしかった。
***
「日織、明日の集まりではお前、健二くんとの仲を清算するつもりなんだろう?」
会合の前日の夜――。
お父様から応接室に呼ばれて、両親の前に座らされてしまった。
ピリピリとした空気に、正座した腿の上に揃えた両手を所在なく何度も組み替え、組み替えしていたら、お父様が静かな声音でそう問いかけていらした。
「え……?」
いきなり核心をついたことを言われた私は、瞳を見開いて固まってしまう。
「ほかに好きな男の人でも出来たのかい?」
私の返事を待たず、ゆっくりと続けられたそのお言葉に、私はハッとしてお父様を見つめた。
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