21.私の好きな人

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「前にも言ったと思うが、私も母さんも日織(ひおり)が本当にしたいことがあるならそれを応援したいと思っている。結婚にしてもそうだ。幼い頃からお前にプレッシャーを与えてしまっていたのかも知れんが……お前にその気がないのに(とつ)がせるような横暴はしないつもりだよ。ましてや――」  そこで言葉を区切られると、お父様は私をじっと見つめていらした。 「健二(けんじ)くんも、お前のことを想ってくれているようには見えないしね」  一応立場上、私のことを許婚(いいなずけ)として扱ってくれている節ではあったけれど、そこに愛情があるかというと(はなは)だ疑問に感じていたのだ、とお父様はおっしゃった。  当人同士がその気にならないのに、神崎(かんざき)さんへの義理だけで話を進めていいものか、お父様とお母様はずっと迷っていらしたらしい。 「それに……どちらかと言うとね」  そこでふっと笑みを浮かべると、お父様はお母様と顔を見合わせてうなずき合われて。 「お前を役所に預けてからの修太郎(しゅうたろう)くんからの報告の方がまめなくらいで。私も母さんも実は驚かされていたんだ」 「え……?」  知りませんでした。修太郎さんが私のことを両親に報告なさっていらしたなんて。
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