21.私の好きな人

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 お父様は立ち上がって応接室を出られると、ややして封書の束を手に戻っていらした。 「見るかい?」  お父様から差し出されるままにそれを受け取って、束ねてある紐を解くと、何通もの分厚(ぶあつ)いお手紙で。 「修太郎さんの、字……」  中身を取り出してみなくても宛名書きで分かります。  それは、(まぎ)れもなくいつもお仕事の時に見慣れた修太郎さんの筆跡で。 「中を拝見しても?」  恐る恐るお父様にお(うかが)いを立てると、何故か「日織(ひおり)が恥ずかしくなければね」と笑みを浮かべて申し添えられてしまった。 「え?」  思わず間の抜けた声を発してしまってから、私は恐る恐る封書の中身を引っ張り出す。  深呼吸をしながら畳まれた便箋を広げてみると……。  右上に日付が付されていて、私がその日何をしたのかが紙一面にビッシリ事細かく(したた)められていた。
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