2868人が本棚に入れています
本棚に追加
/481ページ
(私の勝手な想像なんですが)
佳穂さんが、ご両親のことを話してくださった際、「修太郎は優しいけれど、少し冷たいところもあるの。――って言っても、日織ちゃんにはそんなことないと思うんだけどね」と言っていらして……。そうなんじゃないかな?という思いは半ば確信に変わってしまった。
私にとっての修太郎さんは、ある意味過保護すぎるぐらい過保護で、まるでもう一人のお父様のように感じてしまうこともあるのだけれど……他の方へそこまで踏み込んでおられる彼を見たことはないですし。
(私は修太郎さんにとって〝特別〟な存在なのだと自惚れても許されますか?)
私の正面に座っていらっしゃる修太郎さんの凛々しいお顔をそっと見やりながら、ふとそんなことを思ってしまって。
実際にはちょっぴりでも多く、そんな縁のような気持ちをかき集めておかないと、緊張で今にも倒れてしまいそうだったから。
本当は修太郎さんに手を握って頂けたらこんな不安はすぐさま吹き飛んでしまうのですけれど、さすがにこんなかしこまった席でそのような甘えたことは頼めません。そもそも距離もあります。
今日のために選んだ、清楚さを意識したネイビーのワンピースの裾をほんのちょっとギュッと握って心細さにグッと耐えながら、(上に羽織ったベージュのジャケット、おかしくないでしょうか)とか思うのは、不安で押しつぶされてしまいそうだからなのです。
お父様とお母様は見方になってくださると昨夜確約してくださいましたが、それでも神崎さんを前に、私は身がすくむ思いで。
場所は料亭やホテルなどではなく、神崎家の大広間で……、私は初めて修太郎さんが幼少期をお過ごしになられたお家にお邪魔しています。
最初のコメントを投稿しよう!