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「俺は元から日織さんを女性として見られなかったので、彼女に裏切られたとか兄さんに恋人を奪られたとか、そういう感覚は皆無なんです。それに――」
そこで隣に座っておられる佳穂さんをグイッと自分の方へ引き寄せていらっしゃると、「横取りという意味では俺も兄さんからフィアンセを奪ってるんで同罪です」とおっしゃった。
天馬氏は、またしても瞳を見開いて健二さんをじっと見つめられた。
そうして即座に修太郎さんの方へ目線を転じられると、「修太郎、お前はそれでいいのかっ? 佳穂さんは女っ気の全くないお前のためにわしがわざわざ探してきた女だぞ? 幼い頃から見知った仲だし、年齢だって……藤原さんのお嬢さんよりよっぽどお前に相応しい! 失礼だが日織さんはお前にとったら小娘も同然の年齢差じゃないかっ」とおっしゃって。
でも、修太郎さんの冷たい視線を受けて、すぐにハッとなさったのが分かった。
「父さん、あなたがそれをおっしゃいますか? 宮美さんとあなたの年齢差に比べたら、僕と日織さんの年の差の方が少ないはずです」
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