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私はこの時にはまだ存じ上げなかったのですが、六十三歳の天馬氏に対して、後妻に入られた宮美さんは現在四十八歳。その差十五は、私と修太郎さんの十三歳よりも、確かに大きかったのです。
修太郎さんの指摘を受けて、わなわなと震える天馬氏に、宮美さんが心配そうなお顔で寄り添っていらっしゃるのが印象的で。
「――あなた、残念すぎるぐらい全然お変わりになられていないんですね」
ややして溜め息交じりに口を開かれたのは、今まで修太郎さんの横に黙って座しておられた絢乃さんだった。
「そうやって、何でもかんでもご自分の思い通りになると思っていらっしゃる。相手の気持ちなんてお構いなしに自分の意見を押し付けてばかり。ホントうんざりします」
「母さん……っ」
修太郎さんがそんな絢乃さんを止めようとなさるのだけれど、ダメみたいで。
「修太郎がそこのお嬢さんのことを長いことずっと想ってきたことなんて、親なら嫌でも分かるでしょうに。――あなたが如何にこの子に無関心だったか、よぉーく分かりました。きっと同じように、そこの息子さんに対してもそうなんでしょうね」
棘のある言い方と表情。
離婚なさった元ご主人なのだから、想うことがおありなんでしょう。
けれど、私はどうなってしまうんだろう、とオロオロしてしまう。
そんな私の手を、横に座るお母様がそっと握ってくださって、小声で「大丈夫よ」と声を掛けてくださった。
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