23.所有印を付けたい

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日織(ひおり)さん、週末は空いていますか?」  お昼休み。  市役所近くに修太郎(しゅうたろう)さんが月極(つきぎめ)で借りていらっしゃる駐車場の車の中。  ランチに出掛ける(てい)でバラバラに席を離れて駐車場で落ち合ってから、二人で車の中やどこかのお店でランチを食べる。  最近週に五回はこんな感じで、とても幸せなお昼休みを過ごさせていただいています。って月曜から金曜の勤務で、週五は毎日なんですがっ。  実はあの会合のあと、お仕事自体がとても忙しくなってしまって……。  修太郎さんからこんな風に就業時間後のお誘いを頂いたのは初めてだったから。  私はドキドキと胸が高鳴るのを止められなかった。 「はいっ! もちろんなのですっ! も、もし空いていなくてもバッチリ空けちゃうのですっ!」  嬉しくて、思わず両の拳を握りしめてガッツポーズしながらそう申し上げたら、修太郎さんにクスクスと笑われてしまいました。 「日織さん、そう言っていただけるのはとても嬉しいのですが……先約があったらそちらを優先させてくださいね? いいですか?」  さすが修太郎さんです。  とても大人な発言に、私は反省しました。 「わかりました……」  しゅんとしてそう言ったら、「向こう一週間、ずっと定時後は空けてありますので。そのために僕も最近は仕事、目一杯頑張りましたから。日織さんが無理なさらなくても大丈夫です」と優しく頭を撫でられる。  大きくて温かくて所々血管の浮いた、男らしい修太郎さんの手。  私は彼の手が本当に大好きで……修太郎さんにこうやってよしよしして頂くたびにドキドキしてしまうの。  こんな素敵な方が私の許婚(フィアンセ)だなんて!  今でも信じられない気持ちになるのは仕方ないですよね?
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