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「このモールにはいくつかのジュエリーショップが入っていましてね」
助手席側のドアを開け、私の手を取って車から降ろしてくださいながら、修太郎さんが何でもないことのようにニコッと笑う。
「ジュエリー、ショップ?」
きょとんとした顔で修太郎さんの言葉を繰り返すと、繋いだ左手を不意に眼前へ引き上げられた。
そうして私から視線を逸らさないまま、修太郎さんが薬指にチュッと口付けをくださるの。
「ここにね、藤原日織は塚田修太郎のフィアンセですって印を付けたいんですよ、僕は」
言われて、修太郎さんが先程おっしゃった、「所有印」の意味が分かった私は、一気に頬が上気するのを感じた。
「あ、でも……そんなっ、あのっ」
貴金属はとにかくお値段が張るというイメージがありますっ。
そんな高価なものを修太郎さんに買っていただくなんてっ。
嬉しいくせに、そんなことを考えて尻込みしてしまう私を、修太郎さんがギュッと腕の中にとじこめるように抱きしめていらして。
私は修太郎さんのシプレ系の香りに優しく包み込まれる。
「日織さんに指輪を贈るのは僕の積年の夢なんです。だから日織さん。どうか、何も言わずに僕に印を付けさせて?」
耳元に熱い吐息を吹き込まれるように、熱をはらんだ修太郎さんの低くて甘い声が忍び入ってくる。
私はその声だけで足に力が入らなくなってしまって、修太郎さんにギュッとしがみついた。
「修、太郎さん……」
熱に浮かされたように修太郎さんのお名前を口にして彼のお顔を見上げたら、そっと唇を塞がれる。
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