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「私、今、もっと、って思ってしまいました……。もっと修太郎さんと、その……キ、キス、したいなって。修太郎さんも……少しは……その、同じように、思ってくださったり……なさいましたか?」
真っ赤になりながら、それでもどうしてもお聞きしたい、と思ってしまったのです。
余りにもあっさりと修太郎さんに唇を離されてしまったことが寂しくて……。
もっと、と思ってしまったのは私だけでしょうか?って。
すぐ前に立っていらっしゃる修太郎さんの作業服の裾をちょん、とつまんで……どうしてもそれだけはお応えいただきたいのです、と意思表示をしたら、ややして、
「日織さん、それ、本気でおっしゃってますか?」
修太郎さんがギュッと私を抱きしめると、大きく息を吐きながら少し怒ったような声音でそう問いかけていらした。
その声に驚いて身じろぐと、修太郎さんが許さない、とでも言うように腕に力を込めていらっしゃる。
それは、少し苦しいくらいに強い力で。
「――大好きな日織さんが僕を求めてくださっているのが分かっていて……それ以上を望みたいと……この僕が思わないわけがないでしょう?」
それでも、今日は絶対に指輪を買うのだ、と心に決めてきたから。
だから理性を総動員して我慢しているんです。
お願いですから決意を揺るがせないでください、と懇願するように、修太郎さんが私を熱っぽく見つめていらっしゃるから。
私は……そのお言葉をお聞きして、ふっと肩の力が抜けたようにホッとする。
(よかったのですっ。私だけでは……ありませんでした!)
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