23.所有印を付けたい

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 不安に思いながら修太郎(しゅうたろう)さんを再度見上げたら、溜め息交じりではあるものの、「分かりました」と折れてくださった。  そのことに、私は心底ホッとする。  私が選んだイヤリングを見た修太郎さんが、「日織(ひおり)さん、僕への遠慮でこれを選んだわけではないんですよね?」と念押ししていらっしゃるから「もちろんですっ!」と元気よくお応えする。  修太郎さんが店員さんを呼んでそれを包んで頂いている間、私は何でもない日にプレゼントなんて買っていただいていいのでしょうか?と思ってしまう。  ソワソワしながら彼の横に立っていたら、「日織さんは指輪、もう少し悩んでみてくださいね」とショーケースのほうへ連れ戻されてしまった。 (うーーー。修太郎さん、手強いですっ)  私は仕方なくショーケースの中をぼんやりと眺めながら、修太郎さんが店員さんとやり取りなさっておられるのを時折ちらちらと盗み見る。  イヤリングだけを包んでくださっているにしては時間が掛かり過ぎな気もするけれど、いつも自分用にしかアクセサリーを買ったことがないからそう思うだけかも知れません。  プレゼント用にすると、時間がかかるものなのかも?  いくらケースの中を眺めていても、イヤリングに加える形でおねだり出来る様なお手頃価格の指輪なんてないのです。  指輪、自分で買ったものを左手の薬指にしたんじゃダメでしょうか?とか考えて、それはやっぱり納得していただけるわけないですよね、としゅんとする。  今日が何か特別な日だったなら……私はもう少し素直になれたかもしれません。  ごめんなさい、修太郎さん。  折角修太郎さんがご厚意でここへ連れてきてくださったというのに、変に遠慮しておねだりが出来ないとか……。  本当に私は可愛くない彼女なのです。  自分でもそうだと分かっているのに、男性からプレゼントを贈られ慣れていないので、こういうときにどうすべきなのか、私にはよく分からなくて。 (わーん。自分が本当に情けなくてたまらないのですっ)
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