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「日織さん、お待たせしました」
修太郎さんの声に、ショーケースを見つめたままドツボにはまり込んでしまっていた私は、ハッとさせられる。
「あっ、す、すみませんっ。私……」
ぼんやりしていました、と薄く微笑んだら、「日織さんのことだから指輪を選べなかったこと、気にしておられるんでしょう? 今回の件は貴女の性格を分かっていながらそこを失念していた僕のミスです」と頭を撫でられた。
「怒って……いらっしゃらないのですか……?」
折角の厚意を無下にされたと……自尊心を踏みにじられたと……そう言われても仕方のないことをしてしまった自覚があるのに、私がそう申し上げたら修太郎さんはきょとんとしたお顔をなさった。
「どうして僕が日織さんに怒ったりするんですか?」
逆に問いかけられてしまって、私は言葉に詰まってしまう。
修太郎さんはそんな狭量な方じゃないのに……私のほうこそ修太郎さんの性格を分かっていませんよね。
本当に申し訳ないのですっ。
私がしゅん、としてしまいそうになったのを悟られた修太郎さんが、声の調子を変えていらした。
「そうだ、日織さん。このまま別の場所に移動したいんですが、いかがですか?」
言うなり、私の手を握ってすたすた歩き出される修太郎さんに引っ張られるようにして歩きながら、私は彼の横顔をぼんやりと見つめる。
やはり修太郎さんはとてもかっこいいのです。
私にはもったいないくらいに素敵なのです!
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