23.所有印を付けたい

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***  修太郎(しゅうたろう)さんはショッピングモールから車で十五分ほど戻ったところにある、地元でも有名な〝ある橋〟に連れて行ってくださいました。  国の名勝に指定されているその橋は、渡るのに往復の入橋券(にゅうきょうけん)が必要なので、地元民は眺めるだけで滅多に渡らない橋だったりします。  河川敷(かせんじき)駐車場に車を停めてから、修太郎さんが入橋券を買ってくださって、私は本当に久しぶりに橋へ足を踏み入れました。  直近では高校生のころ、友人たち数名と渡ったことがあるきりだったその橋は、五つのアーチが特徴の、木で出来た美しい橋です。  車での乗り入れは不可なので、渡るなら徒歩のみ。  アーチ部分は全て小刻みな階段状の床板で組まれていて、欄干(らんかん)ももちろん木製。要所要所に打たれた留め具は、たたら鉄で出来た和釘(わくぎ)が使用されています。  橋を支える四つの橋脚(きょうきゃく)は、どっしりとした石垣で出来ていて、その石垣を支える土台は石畳。  子供の頃、夏になると私は両親に連れられてこの橋のたもとでよく川遊びをしました。  橋の影になった橋脚付近の石畳に荷物を置いて、美しい水の中を泳ぎ回った記憶があります。
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