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「お母様、もうお風呂入れますか?」
台所に立つお母様にそう問いかけると、一瞬「?」というお顔をなさったあと、「日織、あなた、お風呂に入ってから修太郎さんのところへ行くの?」と聞かれてしまいました。
私は深く考えもせず、「はい」とお答えしたのですが……後からこの決断で少し恥ずかしい思いをすることになるなんて、この時は思いもしませんでした。
お母様は私の答えに束の間考えていらしてから「そうね、今日は特別な日ですものね」とおっしゃって、少し寂しそうなお顔をなさいました。
「お母様……?」
その表情が気になって、思わず呼びかけたら、さっきのは見間違えかな?と思うような笑顔が返ってきました。
「お湯ならもう溜めてあるし、お父様もお入りになられた後だから問題ないわ。――入る?」
優しく微笑まれたお母様に聞かれて、「はい、十九時に修太郎さんがお迎えにいらっしゃるので、ササッと入ってきますね」と答えて、私はそそくさと入浴の準備を済ませました。
お風呂から上がると、お母様が「湯冷めしないようにしっかり髪を乾かしてね?」とおっしゃって。
私はお母様の言いつけを守って念入りに髪を乾かしました。
髪を乾かし終えて、自室に戻って部屋の掛け時計を見ると、十八時四十分。そろそろ修太郎さんがいらしてしまいますっ。
私は悩んで、いつもと少しイメージを変えてシックな雰囲気の服を選びました。
夜デートになるかもしれないわけですし、せっかくなので、いつもとは違った私を見て頂きたいのです!
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