25.僕は今日どうしても

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日織(ひおり)さん、怒ってしまわれましたか?」  心配そうに修太郎(しゅうたろう)さんがそう問いかけていらっしゃるから、私は窓のほうを向いたまま「お、怒っては……いません」とお答えした。  本当に怒ってはいないのです。ただ、恥ずかしくて修太郎さんの方を向けないだけで――。  ひざに載せた手で、スカートをギュッと握ってしまったのは……仕方ないですよね? 「では、照れていらっしゃる?」  ズバリ心のうちを言い当てられてしまった私は、ぴくんっ、と肩を震わせてしまいました。  うー。分かりやすく反応してしまう自分が、すごくすごく恥ずかしいですっ。 「……だって、修太郎さんが……いきなり……その、耳に……」  言って、先ほどの感触と、耳元で聞こえたチュッと言う、濡れたリップ音を思い出した私は、より一層照れてしまう。 「僕もね、とてもドキドキしています。こうして日織さんと二人きりになるのは本当に久しぶりですし……」  おっしゃってから、少し沈黙。  私はその沈黙が気になって、恐る恐る修太郎さんの方を振り返りました。  そうしたら、修太郎さんがじっと私の目を見つめておられて。眼鏡越しの真剣な眼差しに縫いとめられて、私は身動きできなくなってしまいました。  きゃー、心臓が持ちそうにありませんっ。
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