26.一線を越える覚悟

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 あの後、洋食屋さんで夕飯を食べた私たちは、今、修太郎(しゅうたろう)さんのマンションにいます。 「夕方に一旦帰宅して窓を開けて出てたんですけど、やはり空気がこもっていて暑いですね」  修太郎さんのお部屋は九階にありますので、窓を全開にして出かけても問題ないのでしょうか。平家住まいの私にはイマイチよく分かりません。  エアコンのスイッチを入れて、次々に窓を閉めていかれる修太郎さんに(なら)って、いくつかの窓を閉めながら、そんなことを考えてしまいました。  クーラーの冷気で涼しくなってきた部屋の片隅で、修太郎さんに運んでいただいた荷物(お泊まりグッズ)を整理していたら、 「お風呂もすぐに入れますが、先に入られますか?」  何でもないことのようにそう問いかけられました。 「あ。いえ、実は出がけにもう入ってきたので、私は大丈夫です」  言うと、修太郎さんが一瞬驚いたように動きを止められたのが分かりました。 「――?」  きょとんとしてそんな彼を見上げたら、「道理でいい香りがなさると――。それで……それは……その、僕と一線を越える覚悟をご自宅でなさっていらしたということでしょうか? すみません、気づかずにたくさん寄り道をしてしまいました」と言われてしまって。
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