26.一線を越える覚悟

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***  お風呂の説明を一通り受けた後で、修太郎(しゅうたろう)さんに、脱衣所入り口ドアについた鍵を掛けるように言われてしまいました。  お風呂のドアの鍵は実家(うち)にもありますが、脱衣所にも鍵が掛かるのにはビックリです。  最近のマンションはすごいのですっ。  あ。でもこの仕様は、誰かが入浴の際に鍵をかけてしまうと、他の人は洗面所が使えなくなってしまうのでは?  そこまで考えて、お一人住まいの修太郎さんには関係ありませんでした、と思い至る。  今日みたいに私がこちらにお邪魔することになれば別として……。 「鍵……ですか?」  キョトンとしてお伺いすると、「僕が覗きたくなってしまうので」と、何故かさわやかににっこり微笑まれてしまいました。 「え?」  本気か冗談か分からない修太郎さんの言動に、私はますます戸惑います。 「何より、その方が日織(ひおり)さんも落ち着いて入浴できるでしょう?」  いざとなったら、コインなどを使えば外側から簡単に開けることができる鍵のようですが、確かに掛けさせていただけると、気持ちが違いそうです。 「お湯も溜めてありますので湯冷めしないように温まって出てきてくださいね」  そこまで仰ってから、「でも、あまり長湯をして倒れないように」と頭を撫でられました。  そういうことをされるたび、修太郎さんはやはり年上の男性なんだ、と実感させられます。  私が頼りないので仕方ないのですが、いつか私も修太郎さんに甘えていただけるような存在になりたいのです。  そうですね。例えば……。
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