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修太郎さんに促されるままに立ち上がろうとした私は、足に力が入らなくてよろめいて。
寝室へ行くだけですが、それはつまり……その……そういうことをするための移動なんだと自覚した途端、恥ずかしさも手伝って身体がふるふると震え出してしまいました。
(これではまるで、生まれたての小鹿なのです……!)
自分の不甲斐なさに泣きそうになった私を、修太郎さんが無言で抱き上げてくださって。
彼にお姫様抱っこをされるのは初めてではないですが、今この時ほどの照れ臭いそれを、私は経験したことがありません。
修太郎さんの腕の中、私は一生懸命胸を覆い隠したまま、それでも視線は彼から外せませんでした。
Tシャツ越しに伝わってくる修太郎さんの体温が、いつもより高く感じられてしまうのは、気のせいでしょうか?
何だか何もかもが恥ずかしくて……穴があったら入りたい気分です。
寝室に入ると同時にほんのりとした明度の照明がつけられました。リビングのそれほど明るくはありませんが、真っ暗でもなくて――。
布団をまくり上げたベッドにそっと下ろされた私は、部屋の明るさと、シーツのひんやりした感触に、ギュッと縮こまってしまいました。
夏なので冷たい感触は寧ろ心地いいはずなのに、明るみの中、横たえられたことが心許なくて恥ずかしくて――。
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