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「緊張……していらっしゃいますよね」
修太郎さんが、寝そべる私の顔の両横に腕をついていらした瞬間、思わず身体をビクッと跳ねさせたからでしょう。
それに気がついた修太郎さんにそっと髪の毛を撫でられました。
「申し訳な、いの、です……」
何度も申し上げますが、覚悟はしているのです。
でも、これから何をされるのか、どういう風に物事が進んでいくのか、とか……そういうことが何となくしか分からないことが、どうしようもなく怖いのです……。
左手で両胸を隠すように覆ったまま、震える右手を伸ばして、そっと修太郎さんの頬に触れたら、修太郎さんが息を飲まれる気配がしました。
「い、いまから何を、とか……そういうのが……よく分からなくて……。分からないから……正直怖い、です。……緊張も……して、います。でも、でも……決して……その、イヤ……なわけじゃ、ないのです……」
それだけはお伝えしておかなければ、と思いました。
「なので修太郎さん。どうか私に……その、変に遠、慮とか……なさらず。……あのお約束の通り、キスの先のことを教、えてく、ださい」
修太郎さんから視線を逸らさずに、ちゃんと言えました。
「……そ、それで、出来れば……手順とか……私が……すべきこと?とか……そういうのも一緒に、あの……お、教えていただけたら……私……頑張り……ます、ので……。お願い……しま――」
ゴニョゴニョと、語尾の辺りが消え入りそうな声音になってしまいながら。
それでも……お伝えしたいことは全部話せたと思います……。
祈るような気持ちで修太郎さんのお顔を見上げましたが、逆光になっていて、私からは彼の表情に現れる感情の機微がイマイチ見えなくて。
そのことが不安で不安でたまりません。
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