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「お?」
「……お腹がっ」
言うと同時にキュルルッと小さくお腹の虫が鳴いて、修太郎さんに笑われてしまいました。
「これは大変ですね。このまま続けていたら、僕の可愛い奥さんが餓死してしまいそうです」
修太郎さんのお声に、頬がブワッと熱くなります。
私はあんまり恥ずかしくて、彼の腕をすり抜けるようにしてベッドから逃げ出しました。
そうして照れ隠しにプーっと頬をふくらませると、
「修太郎さんはベッドの中だと意地悪ですっ。――だから……早くそこから出てくださいっ!」
言いながら寝室のカーテンを開けて、ベッドに朝日を当ててやります。
修太郎さんが、眩しさに驚いて目を眇められたのを拝見して、少しだけ溜飲が下がりました。
と、突然ベッドの宮棚に置かれていた修太郎さんの携帯電話がブーッブーッと振動して。
私は突如鳴り響いたその音に、思わずビクッと肩を震わせます。
寝室の掛け時計を見やると、時刻は午前十時を回っていました。
夜遅くまで起きていたので、少しお寝坊さんをしてしまったようです。
修太郎さんが着信中の画面を一瞥なさった後、私に仕草でごめん、と謝っていらしてから、「もしもし?」と電話をお受けになられました。
私はそのままそこにいていいものか迷ってから、聞き耳を立てるようになってはいけないと立ち去ろうとして――。
ベッドサイドに腰かけた修太郎さんにグイッと手を引かれて、彼のすぐ横に座らされてしまいました。
そうなさってから、修太郎さんは「今、日織さんも一緒だからスピーカーに切り替えるぞ」と前置きなさってからハンズフリーになさいました。
「あ、あのっ、私も会話をお聞きしてよろしいのですかっ?」
戸惑いながら修太郎さんにそう問いかけたら――。
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