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『その声は……日織ちゃん!? 貴女、まさかもう修太郎と一緒に住んでるのっ!?』
スマートフォンから女性の声が弾けます。
「か……佳穂……さん?」
聞きお覚えのあるハキハキとしたそのお声に、私は恐る恐る呼びかけました。
『そう、佳穂よ。――ね、日織ちゃん、さっき健二から聞いたんだけど、修太郎と入籍したって本当なのっ?』
「あ、はい、昨日……」
私がそうお答えすると、電話口から溜め息が聞こえてきて。
『日織ちゃん、入籍、ちゃんと納得してしたの? 修太郎に流されちゃったんじゃないっ?』
佳穂さんは怒っていらっしゃるみたいです。
何故でしょう?
私は修太郎さんのお顔を見つめて首を傾げました。
『あー、もう、電話じゃやっぱりダメね! 今から修太郎ん家行くから! 外出とかしないで待ってて!』
「えっ? あ、オイっ!」
修太郎さんが慌てて電話に呼びかけられましたが、すでに通話は切れていて、スピーカーからは無情にもツーツーという音が聞こえてきます。
「あ、あの……修太郎さん?」
私も戸惑いましたが、修太郎さんも困惑していらっしゃるみたいです。
「佳穂さん、何分ぐらいでお着きになられるでしょうか?」
とりあえずパジャマ姿のままは良くないです。
お着替えしてお化粧もっ。
そう思ってベッドから立ち上がった私ですが、修太郎さんは諦めきれないみたいで、佳穂さんにリダイヤルしておられます。でも、出ていらっしゃらないみたいです。――というより。
「あいつ、電源切りやがったっ!」
修太郎さんがそんな言葉を使われるなんて意外なのですっ。
私は、ここへ佳穂さんがいらっしゃるという焦りより、修太郎さんの新たな一面が見られたことが嬉しくなって、思わず修太郎さんのお顔をマジマジと見つめてしまいました。
いつか、私にもあんな乱暴な言葉を投げかけてくださる日がくるでしょうか? 考えただけでワクワクします。
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