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でも、今はっ。
「修太郎さん、とりあえず……着替えましょ?」
スマートフォンを握りしめて固まっておられる修太郎さんの肩に、そっと手を触れて促します。
お腹も空きました。
何か食べる時間は残されているでしょうか? というより佳穂さんはお腹、空いていらっしゃらないでしょうか?
私はいそいそと着替えを抱えて脱衣所にこもると、少し考えて入り口に鍵をかけました。
全部見られてしまった間柄ですが、やはり不意打ちは恥ずかしいので用心します。
私が着替えを終えて脱衣所から出ると、修太郎さんが立っていらして。
修太郎さんも、ちゃんと着替えていらしてホッとしました。
今日の修太郎さんは、レンガ色より少し赤みの強い朱殷色のサマーニットを着ていらして、その裾から白のロング丈のTシャツが見えています。それに黒のスキニーパンツをあわせていらっしゃるのがとてもお洒落で、思わず見惚れてしまうぐらいカッコいいです。
私、修太郎さんというと作業服姿というイメージが定着してしまっているので、私服姿はとても新鮮でドキドキします。
ちゃんと眼鏡もかけておられますが、どこかいつもと雰囲気が違って。それは服装の違いだけじゃない気が……――、って……あっ! そこで、やっと気がつきました。
「ごめんなさいっ。私が洗面所を占拠してたからっ」
そう、雰囲気が違って見えるのは、髪型のためです。
洗面所にスタイリング剤とか置いてありましたので、私のせいなのです。
「大丈夫ですよ。僕の仕度なんてすぐすみますから。日織さん、今日のお洋服もとてもお似合いです」
修太郎さんに笑顔を向けられて、改めて自分を見返します。
今日は海老色のミモレ丈スカートに、白地にストライプのシャツを着ています。
期せずして修太郎さんのサマーニットと私のスカート、お色が似ていてお揃いみたいで嬉しいのですっ。
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