29.言われてみれば、そうでした!

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日織(ひおり)さん、まだ名目上は許婚(いいなずけ)だった頃に俺、言いましたよね? 俺の言いなりになってばかりで自分を持っていない貴女が、俺は嫌いだったって」 「……はい」  自然、声が小さくなってしまいます。  これでは……怒られてしまっても仕方ない、と思いました。 「今の貴女は、依存する対象が俺から兄さんに移ったってだけで……あの頃とちっとも変わっていないです」  ――違いますか?と畳み掛けられて、私はますます縮こまってしまいました。  確かに、おっしゃる通りなのです。  私、自分の人生に関わることなのに、修太郎(しゅうたろう)さんの言動に、何ら疑問を抱かずに入籍をしてしまいました。 「日織ちゃん、本当はね、その時にバカにすんな!って修太郎を殴っても良かったと思うのよ? 記念日だか何だか知らないけど、そんなの勝手に押し付けないで!って。何で相談もなくそんな大切なこと、勝手に決めちゃうの?って」  言いながら、佳穂(かほ)さんが、うなだれる私の頭をそっと優しく撫でてくださいました。  修太郎さんは、そんな私の肩にずっと手を載せてくださっていますが、目の前で繰り広げられる私たちのやり取りに、ご自身も何か思われたみたいで。  何も口を挟んでいらっしゃらないのがその証拠に思えました。 「さて、修太郎――」  佳穂さんが私の頭からスッと手を離されると、声のトーンをひとつ下げられました。 「今の私たちのやり取りを聞いて、何も思わなかったとは言わせないわよ? ――アナタは日織ちゃんをどうしたいの?」
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