29.言われてみれば、そうでした!

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「ぶはっ、日織(ひおり)さん、すみません。さっきのあれ、あきらかに言い過ぎでしたし、俺の思い込みだった、みたい……ですっ」  必死に笑いを抑えていらっしゃる様子で、健二(けんじ)さんが沈黙を破ってくださいました。 「……な、内容は少しアレでしたが……ちゃっ、ちゃんと意見っ、言えるみたいで、ホッとしました。俺、てっきり昔みたいに何も言えないままに、かと思って心配してたんです、けどっ……」  そこでとうとう我慢できなくなられたようで、肩を震わせて笑い始めてしまわれて。 「ちょっ、健二、そんなに……笑っ、たら……」  健二さんをたしなめていらっしゃる佳穂(かほ)さんも、懸命に笑いを堪えておられるのがわかります。  そんなお二人の様子に、私は今更のように恥ずかしくなってきました。  勘のいいお二人です。  なんの、と告げていなくてもさっきのアレがなんの話か、明らかに分かっておられるみたいなのです。  うー。穴があったら入りたいのですっ。  私は恥ずかしさに、縮こまって修太郎さんの胸に再度顔を埋め直しました。  そんな私を、修太郎(しゅうたろう)さんがギュッと抱きしめてくださって、私は少しホッとします。 「――僕だけずっと黙っててすまない。二人の指摘が余りに図星過ぎて言葉が出てこなかったんだ。……その、わざわざ僕らのために苦言を呈してくれて有難う。けど……いま日織さんが(かば)ってくださったように、僕は彼女の意思を(ないがし)ろにするつもりは微塵もないから。それだけは、約束する。――それに」
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