30.これからどうしますか?

3/3
前へ
/481ページ
次へ
「あ、あのっ、でもっ」  さすがに立て続け過ぎますし、これ以上修太郎(しゅうたろう)さんに散財させてしまうのは妻として如何なものかと思ったりもして。 「大事なことですよ、日織(ひおり)さん。指輪がないと結婚式のときに困りますし。それに――」  そこまでおっしゃって、私の左手の薬指に光るダイヤの指輪に口付けていらっしゃると、 「入籍を済ませたのにいつまでも婚約指輪というのもおかしな話です。僕はね、一日も早くみんなに知らしめたいんですよ。日織さんは僕の奥さんです、って」  指輪越しにじっと見つめられて、私は照れてしまいます。 「しゅ、修太郎さん……、そんなに見つめられると恥ずかしいのですっ」  もじもじしながらそう言えば、くすくすと笑われてしまいました。 「……修太郎さんは時々とっても意地悪なのですっ」  言って、彼を軽く睨みつけたら、 「ねぇ日織。キミは僕に、塚田(つかだ)修太郎は貴女のものだという(しるし)をつけなくても、平気なの?」  不意に真剣な顔をなさった修太郎さんから、甘えたような低い声音でそう問いかけられました。  口調も少しだけいつもと違っていて――。  途端、私はソワソワとしてしまいます。  私の左手を持ったままの修太郎さんの手をぎゅっと握り返してから、 「平気なわけないのですっ! わ、私もっ、修太郎さんにっ、つけたいのですっ!」  わわわっ。思わず勢いこんで首輪、とか言ってしまいましたっ。  ち、違いますっ。の間違いですっ。  オロオロと修太郎さんを見つめたら、「僕は貴女の犬ですから、首輪でも構いませんよ?」と笑っていらして。  絶対に意地悪なのですっ。  そこで私、やっと気がつきました。  皆さんがおっしゃってらした、修太郎さんの暴走ってこういうこと、でしょうか?  こんな修太郎さん、職場の皆様にはお見せできませんっ!  
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2871人が本棚に入れています
本棚に追加