5.健二さんとの電話

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 結局、私は本題を伝えるのに必死で、せっかく健二(けんじ)さんと初めて会話できていると言うのに、近況報告やこちらの思いなど、何ひとつ話すことができなかった。  ただ、健二さんも、私の言葉に相槌(あいづち)を打つばかりで、御自身のことをお話してはくださらなかったので、この件に関してはおあいこかな?と思う。  歓迎会に行ってもいいかどうかを問いかけた私に、健二さんは、 『貴女が行きたいと思うなら行くべきです。でも、嫌ならちゃんとお断りしてください。俺は日織(ひおり)さんの意思を尊重します』  とだけ答えてくれた。  それは投げやりな感じの言い方ではなくて……本当に私自身に決断を(ゆだ)ねてくださっているのが分かる口調だったので、私は素直にうなずくことが出来た。 「では、せっかくなので行って参りたいと思います」  深呼吸をしてそう言うと、『分かりました。行くからには目一杯楽しんで。ね』と返事があった。
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