31.あなたに、キスのその先を〜第二夜〜*

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 私は、修太郎(しゅうたろう)さんの唇が離れた際、 「しゅ、たろぉ、さんっ、お願っ……」  言って、服の中に伸びる彼の手を、布越しにギュッと掴んで、恐る恐る触れて頂きたい場所に導きます。 「ね、日織(ひおり)、キミが触って欲しいのはどこ? ちゃんと言葉にして?」  それなのに、修太郎さんはわざと私の手に逆らうと、そこを(かす)めるようにして避けていらして。 「んっ、やぁっ、そこじゃな……いの、っ」  そこじゃないのです、と申し上げたいのに、あまりのもどかしさに言葉もしっかりつむげなくて。 「ここじゃないなら、どこ?」  ギュッと胸のふくらみ全体を掴むように、少し強めに握っていらっしゃる修太郎さんの大きな手に、私は思わず自分で先端に触れようとして――。 「ご自分で触れられるのは無し、ね?」  寸でのところで、修太郎さんにもう一方の手で制されてしまいました。  い、意地悪なのですっ。  潤んだ()で懇願するように修太郎さんを見上げたら、 「お願い、日織。ちゃんと聞かせて? 僕に、どうして欲しいの?」  いつも敬語で話していらっしゃる修太郎さんが、ほんの少し砕けた口調になっておられるのも、いつもと違うから落ち着かなくてソワソワします。  佳穂(かほ)さんとお話になられる時ほど強い口調ではありませんが、明らかにいつも私に話しかけていらっしゃる修太郎さんの口調ではありません。
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