31.あなたに、キスのその先を〜第二夜〜*

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 この感覚は昨日も経験しました。  私は修太郎(しゅうたろう)さんの背中にそっと腕を回しながら考えます。  そう、前のも、やっぱり修太郎さんに胸を触られた時です。  確かあのとき、修太郎さんはそんな私をご覧になられて「いってしまいましたか……?」とおっしゃいました。  その時は勉強不足で、それに対して頓珍漢(とんちんかん)なことを返してしまいましたが、少し学んだ今なら分かります。 「私、いま、()った、んで……しょうか? ……そういう認識で……合って、います、か?」  ぼんやりした頭でつぶやくと、修太郎さんがハッとなさったように私から身体を離すと、顔を見つめていらっしゃいました。 「日織(ひおり)さん……」 「私、昨日より、少しだけ……賢く……なったん、です、よ?」  乱れた呼吸の隙間を縫うように、途切れ途切れにそう申し上げてニコッと微笑んだら、修太郎さんに優しく唇をなぞられました。 「驚きました。まさか日織さんから……そんな言葉が聞けるなんて」
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