31.あなたに、キスのその先を〜第二夜〜*

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「……日織(ひおり)さん、無理、なさって……おられませんか?」  修太郎(しゅうたろう)さんが気遣わしげにそうおっしゃるので、私はふるふると首を振りました。  そこで、ふとあるテレビ番組を思い出した私は、声の調子を変えて言ってみます。 「チッチッチッ。日織を舐めてもらっちゃあ困ります」  前に教育番組を見ていたら、未来から来た家庭教師という設定のお姉さんが、男の子にそんな台詞をおっしゃっていました。  そちらのほうのセリフは、正確には「未来を舐めてもらっちゃあ困ります」でしたけれど、その言い方が可愛かったので、思わずアレンジして使いたくなってしまいました。  空気が(なご)むかな?って思ったんですけど……。  ドキドキしながら修太郎さんを見つめたら、ふっと小さく笑ってくださいました。 「また何の真似ですか、それは……」  仰りながら、頭を優しく撫でてくださいます。  私はそれだけでキュンと切なくなりました。  私、修太郎さんが好きで好きでたまりませんっ。  途端、修太郎さんが小さく息を詰めていらしたのが分かって、私はキョトンとします。 「……今、日織さんの中、ギュッと締りました」  言って、熱い口づけを落とされて……。  私は一生懸命それに応えながら、頭の片隅で修太郎さんのセリフをぼんやり考えて、しばしのち、意味を理解して赤面しました。 「んっ、――っ!」  その途端、危うく息を詰めそうになりながら、驚きに身体を震わせます。  そ、そんなことが分かるのですかっ。  お、男の方の分身さんってすごいのですっ!
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