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シプレ系
修太郎さんにくっつくと、彼がつけている香水の香りが私にも移ってくる。
身嗜みのひとつに香りまで取り入れておられる、そういう修太郎さんのお洒落さに、私は大人の男性の色香を垣間見てしまう。
「私、修太郎さんの香り、大好きです」
ともすると、くさいと感じてしまうかもしれない香水を、修太郎さんはほんの少しふわっと香ってくる程度に抑えた上品な使い方をなさる。
お仕事の日でも休日でも、何かの拍子に思い出したように漂ってくる、その柑橘系に近いような、ウッディーで大人なにおいに、私はいつもときめかされてしまう。
香りと言うのは不思議なもので、目には見えないけれど確かにそこに存在していて……しかも凄く存在感がある。
「香水の話ですか?」
腕の中に私を抱きしめたまま、修太郎さんが問いかけていらした。
***
今日は休日で、私は修太郎さんのお宅へお邪魔していた。
ここにくるのはあの飲み会後初めてなので、少し緊張している。
眼鏡を外して裸眼になられた修太郎さんが、ソファに腰掛けて、私においでおいでをなさる。そんな彼に恐る恐る近づいたら、手を引っ張られて彼の開いた足の間にストン、と座らされた。
斜めに引っ張られたので背中を彼に向けて座ったわけではなくて、横座りみたいになってしまった。
私は座ったはずみで乱れてしまったスカートを慌てて整える。
「こうしていると初めてお会いした日を思い出しますね」
言いながら、「もっともあの日、日織さんは足の間ではなく、僕の腿の上に載っていらしたんですが。――今日もそうなさいますか?」と付け加えてクスクスと笑っていらっしゃる。
「そ、それは恥ずかしいです……」
じかに座れば、彼の肌のぬくもりをより直接的に感じてしまう。それに、何より――。
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