ズレているふたり

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「私はっ……お風呂後に綺麗になった私をたくさんたくさん()でていただきたいのですっ。なのに修太郎(しゅうたろう)さんはいつも……」  そこから先は恥ずかしくて言えなくて、思わずごにょごにょと口ごもってしまいました。 「い、いつもっ。ダメです、先にお風呂に入らせてくださいって私、お願いしてるのにっ」  なのに――。  そんな時には我慢なさらないくせに……何故いま、準備万端でいい香りに満たされた私を前に、「我慢してるのに」とかおっしゃるんですかっ?  おバカさんなのですかっ!?  私の豹変に抱きしめる腕の力を緩めた修太郎さんを振り返って、涙目でキッと睨みつけます。 「私っ、お風呂に入った後の方がいいのですっ」  言ったら、修太郎さんが眼鏡とドライヤーを洗面台の上に無言で置いていらして。  そのまま不意に私をお姫様抱っこなさいました。 「なっ! ――あ、あのっ、修、太郎さんっ。私の話、聞いてましたか? わ、私っ、怒っているのです、よっ?」  じたばたと足をバタつかせながら抗議の声を上げてみますが、冷ややかに見つめ返されて、私はたじたじになりました。
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