ズレているふたり

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「僕がお風呂上りの美味しそうな日織(ひおり)を見て、全く欲情していなかったと思いますか?」  言いながら、私のパジャマのボタンをひとつずつ外していらっしゃる修太郎(しゅうたろう)さんに、私は何もお答えできずに翻弄されるばかりで。 「ねぇ日織。どうして答えないの?」  いつもは敬語の修太郎さんが、声を低めて軽く敬語を外していらっしゃるのが堪らなく私を(たか)ぶらせます。 「しゅ、たろ……さん」  お風呂上がりの私に興味がないなんて……そんなことはなかったのだと、今ならハッキリ分かります。  小さくゆるゆると首を横に振りながら。  でも……私、それなら尚更。やっぱり言わずにはいられなかったのです。 「修……太郎さ、んの……バカ……。分からず屋」  って。  タイミングが合わないって……ずっとずっと私、悩んでいたのですよ?  前にお家でお風呂に入って修太郎さんとのお泊まりに備えたら、お母様に「まぁ!」みたいな反応をされてしまって……入ってくるの、恥ずかしくなってしまったのですっ。  だからっ。  修太郎さんのお家でお風呂をいただいた後は私、いつもソワソワと期待してしまうのです。 「せっかく綺麗にしていい匂いになって……今度こそはってワクワクしながら修太郎さんの横に行くたび、『さぁやすみましょう』ってかわされていた私の気持ち、修太郎さんに分かりますかっ?」
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