確かめてみますか?

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 渡された紙袋の中を覗くと、三十路(みそじ)を過ぎた男が手にするにはかなり恥ずかしい、桃色にハートが散りばめられた包装紙に包まれた、平たい正方形の箱が見えた。  それが、鮮やかな赤いリボンで、いかにも贈り物です!と言った風情(ふぜい)できっちりと(ゆわ)えられている。  紙袋から小箱を取り出してリボンを解くと、少し考えて包装紙が破れないように、慎重に包みを開き始める。  こういうときに、包装紙を破り開けてしまえない自分の性格が、男らしくないとか思えてしまったりもするのだけれど、愛しい女性からの贈り物だと思うと、いつも以上に丁寧に開けたくなってしまうのは仕方ないだろう。  僕が丁寧に包みを開けていくのを、日織(ひおり)さんがすぐ横でソワソワした様子で見つめていらっしゃる。  その視線があまりにも真剣で、僕は思わずクスッと笑ってしまった。 「修太郎(しゅうたろう)さん?」  何ら言葉を交わしているわけでもないのに、僕が急に笑ったりしたから、日織さんがきょとんとなさった。  それがまた愛らしくて、僕は口角が上がるのを止められない。 「いや、日織さんがあまりにも真剣に見つめていらっしゃるので、ちと照れ臭くなりまして」  言えば、「ごっ、ごめんなさいっ」と顔を両手で覆ってこちらを見つめないよう努力なさるとか、本当、何て可愛いんでしょうね?  彼女の行動に、心の中では物凄く(もだ)えているくせに、あえて日織さんの仕草には触れず、僕は包みを解くのに集中した。
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