確かめてみますか?

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 中には、外側とは真逆の印象の、真っ白な箱が入っていて、僕はそのギャップがまた彼女らしいな、とか思ってしまった。 「開けますね」  目隠しをしたままの日織(ひおり)さんにそう告げると、彼女が恐る恐る指の隙間を広げてこちらをご覧になられる。 「――普通に見られて構いませんよ?」  その行動があまりにもツボにハマってしまって、僕はクスクス笑いながら彼女に告げた。 「それ、可愛すぎて押し倒したくなるので、そうされたくないなら――」  おやめになられた方が……と続ける前に、慌てたようにパッと手が開かれて、箱に伸ばしたままの僕の手にそっと触れていらっしゃる。そうして僕の目をじっと見つめながら、フルフルと首を横にお振りになると、 「先に、こっちです」  再度チョコが先だと念押しされてしまった。 「でないと、お部屋の暖かさで溶けてしまいますっ」  日織さんは、少しずつ暖まりつつある部屋の温度が気になっていらっしゃるらしい。  彼女に促されるままに(ふた)を開けると、甘いチョコレートの匂いと一緒(とも)に、濃厚な洋酒の香りが漂った。 「生チョコに、ラム酒をたっぷり入れてみました」  それで、普通のチョコレートよりしっとりしていて溶けやすいのだと日織さんが言う。 「えっと、多分指で直接つままれると手が汚れちゃうと思うので……」  おっしゃって、紙袋の中に取り残されたピックを僕に手渡していらっしゃると、「これで刺して召し上がられてください」と僕の目をじっと見つめていらして。  僕はその視線だけで、年甲斐もなくドキドキしてしまう。
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