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「確かにお酒は強めかもしれませんね。でも、とても大人な味わいで、僕好みです」
言って、
「もうひとつどうぞ」
先ほどと同じことを、僕は日織さんに三度ばかり繰り返した。
――と。
「しゅ、たろ……さん。私、何だかほわほわしましゅ」
トロンと蕩けた目で日織さんが僕を見つめていらして。
呂律の回らないこの感じ。
僕は、初めて彼女をここへお連れした日のことを思い出して、気持ちが昂ってくるのを感じずにはいられない。
「日織、僕はもう少し、貴女の作ってくださったチョコをキミと一緒に味わいたいので……お付き合いいただけますか?」
じっと彼女の目を見つめて問い掛ければ、
「分らりまひた。お付き合いさせれいたらきましゅっ!」
日織さんが、一瞬だけキリッとしたお顔をされて、敬礼をなさった。
本当、彼女は酔うといつもとはまた違った一面を見せてくださるからたまらない。
僕は先程ほんの少し妄想した、チョコまみれの日織さんを思い描いて、シーツの替えを用意しないとな、と思った――。
END(2020/01/27–2020/01/30)
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